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認知行動療法 ③

 今日は情動コントロールについて、脳科学の観点からお話しさせていただきます。


 情動とは何でしょうか。

 情動とは悲しみ、嫌悪、怒り、喜び、恐れ、驚き、などのことです。

人間らしい生活を送るのに必要不可欠です。

喜びを感じなければ、幸せな実感を得ることはできません。

また、恐れや怒りがなければ、危険な状態を回避できないかもしれません。

このような人間の情動をつかさどっている脳の部位は“偏桃体”と呼ばれます。

“偏桃体”は、大脳辺縁系と呼ばれる比較的原始的な脳の中にある場所で、記憶をつかさどる海馬とともに、大脳辺縁系の主要な部位とされています。

 この偏桃体は、情動の中でも特に快、不快、恐怖などを発動します。豊かな感情を生み出す部位であると言えます。

 一方、額の部分にあたる脳である“前頭葉”は社会的な生活のなかで、さまざまな抑制をかけている部位です。

場をわきまえて、発言する内容を精査したり、待つべき時にはじっと待つなど、衝動的な行動にならないよう調整してくれています。

人とサルの脳を比べた場合、前頭葉の大きさは人間の方がはるかに大きいと言われています。

前頭葉が発達した人間だからこそ、自分の情動をコントロールして、他者の気持ちを考えることができるということになります。

つまり“偏桃体”が、感情を豊かにしてくれる動物的な情動に関係する脳であり、“前頭葉”は、人間的な社会性を可能にする脳であるといえます。

特にこの2領域がバランスよく働いてくれることで、人間らしい生活を送ることができるというわけです。


次回はそのバランスが崩れたら…をテーマにお話しさせていただきたいと思います。
【 2018/10/01 】 未分類 | TB(0) | CM(0)

認知行動療法 ②

前回は認知行動療法の目的をお話しさせていただきました。

 ある出来事が起きると自動的に湧き上がる思考(自動思考)によって、苦しくなったり、つらくなったりして、その後の行動にも影響が出てしまうことがあると思います。

認知行動療法は、この流れの中で“認知”や“行動”に働きかけ、バランスの良い思考や行動に変えていくことを目的としています。

では、どのように働きかけていくのでしょうか。

前回の例をもとにお話しさせていただきます。

【例】
友達にメールをしたが返信がこない【出来事】
        ↓
嫌われているかもしれない【認知(自動思考)】
        ↓
悲しい・情けない・寂しい【感情】
外出しなくなる【行動】

ここで、感情を自分の感覚で数値化します。

上記の例では、
悲しい(70) 情けない(60) 寂しい(50)

これは感覚で大丈夫ですし、それぞれ最高100で評価してみてください。

次に、自動思考を裏付ける事実【根拠】を考えます。

例えば、
メールしてから、もう3時間になるが連絡がこない。【根拠】

次に、自動思考とは反対の事実【反証】はないかを考えます。

例えば、
 仕事が忙しくて、返信する時間がないのかもしれない。
 もともと返信の早い人ではないのかもしれない。

このよう【反証】を立て、次にバランスの良い思考【適応的思考】を考えてみます。

例えば、
 返信が遅いのは気にはなるが、仕事や用事など何か事情があるのかもしれない。
 早く返信がほしいというのは、こちらの都合だから、相手のペースも配慮するべき。

そして、最後に【今の気分】をもう一度自分の感覚で数値化してみます。

悲しい(60) 情けない(50) 寂しい(30)

自動思考を見つけた後に、【根拠】⇒【反証】⇒【適応的思考】と考えてみると、多くの場合【今の気分】でつらかった気持ちは少し落ち着きます。

このように考え方を見直す方法を認知再構成法と言います。

最初は文字にしてみると、その流れがよくわかると思います。

よろしければ、試してみてください。

【 2018/09/02 】 未分類 | TB(0) | CM(0)

認知行動療法 ①


 これまでいくつかの“自動思考”についてお伝えしてきました。

 良いか悪いか、正解か不正解かのように極端な思考のどちらかになってしまう“全か無か思考”、一度の失敗ですべてがダメだと思ってしまう“過度の一般化”、全体の中でマイナスな点に注目してしまう“選択的抽出化”、ネガティブな責任はすべて自分のせいだと考えてしまう“自己関連付け”を紹介させていただきました。

 私自身、自分の思考を書き出したことがありますが、これまでにどの自動思考も体験したことがあります。場合によっては、その自動思考によりとてもつらい思いをしたこともあります。皆さんはいかがでしょうか。

 今日は、認知行動療法の目的をもう一度お話ししたいと思います。


 ある出来事が起きると、それを“認知”します。“認知”とはその出来事の受け止め方や考え方のことを言います。この“認知”によって、感情が湧きあがり、ときには体調や行動にも影響を及ぼすことがあります。そして、その“認知”の中に、瞬間的に自動的に湧き上がる思考があります。それが自動思考です。

例をもとに流れを整理してみましょう。

友達にメールをしたが返信がこない【出来事】
        ↓
嫌われているかもしれない【認知(自動思考)】
        ↓
悲しい・情けない・寂しい【感情】
外出しなくなる【行動】

認知行動療法は、この流れの中で“認知”や“行動”に働きかけ、バランスの良い思考や行動に変えていくことを目的としています。

ここで、注意したいことは、“認知行動療法はマイナス思考をプラス思考にすることが目的ではない”、ということです。

 例としてよく紹介されていますが、コップに半分入った水をどう捉えるかを考えてみましょう。

“半分しか入っていない”と考える場合、少し不安になるかもしれません。

“半分も入っている”と考える場合、安心できるかもしれません。

なんとなく、“半分も入っている”と考える方が、プラス思考で、気分が楽だと考えがちです。

しかし、この思考は場面によっては問題があります。

例えば、断水していて水の供給が止まっているときはどうでしょう。

“半分もある”と思って、水を飲んでしまえば、あとでたいへんな思いをするかもしれません。

 こう考えると、プラス思考が必ずしも良いとはかぎりませんよね。

大切なことは、自分の認知がどれだけ現実的かを判断することです。

そして、現実的でバランスのとれた考え方ができるようになることが、認知行動療法の目的ということになります。

 次回は自動思考にどう働きかけていくかを紹介したいと思います。
【 2018/08/02 】 未分類 | TB(0) | CM(0)

自動思考 5

これまでいくつかの“自動思考”を紹介しました。

 “自動思考”とは、出来事に対して自動的に頭に浮かんでくる考えのことでした。そして、この考え方のパターンによって、つらくなったり、苦しくなったりするのであれば、その考え方のパターン(クセ)を見直した方がよいと言えます。

 これまでいくつかの“自動思考”を紹介しました。

 今日はさらに、その“自動思考”の一つ、“自己関連付け”を紹介します。


 “自己関連付け”とはネガティブな出来事の責任はすべて自分にあると考えてしまい、自分以外の責任や原因を考慮しないことを言います。


 例えば、

 「近くの人が、チラッとこちらを見て笑って話していた。私の悪口を言っていたんだ。」


 チラッとこちらを見たのは偶然かもしれませんが、自分に関係のない出来事をすべて自分に結びつけて考えています。

 その場の状況から考えられる原因や可能性を考慮せず、「自分のことを笑って悪口を言っている」と自分が辛くなるようなことと結びつけてしまっています。

このような“自動思考”が強いと、絶えず周りから非難されているように感じたり、すべての失敗の原因が自分にあると考えてしまい、落ち込み方が激しくなってしまいます。

 さらに落ち込み方が強くなると、自分の存在自体を否定することになり、生きていくことも辛くなってしまうかもしれません。


 このような傾向がある場合、その出来事がうまくいかなかった原因を分析してみてはいかがでしょうか。

 そのとき原因として考えられることや別の考えを書き出してみるとよいと思います。

 先の例で、別の考えを探してみると、

・何か面白い話をしていたのかもしれません。

 ・こちらをチラッと見たのは、自分の方を見ただけで、自分を見たわけではなかったかもしれません

 ・そもそも私のことを知らないだろう。


このように、その時とは別の捉え方がないかを探してみるとよいと思います。

 直接確かめることができなくても、このように分析することで、自分の考え方のクセを知り、気持ちが少し楽になるかもしれません。

【 2018/07/02 】 未分類 | TB(0) | CM(0)

自動思考 4

こんにちは。心理士の井上です。

 同じ出来事に対して、人それぞれ受け止め方が異なります。そして、そこには“自動思考”という考え方のクセのようなものがあることを紹介しました。

 これまで、その自動思考の中で、“全か無か的思考”と“過度の一般化”について紹介させていただきました。

 今回はさらに別の自動思考を紹介させていただきます。

 今日紹介するのは“選択的抽出化”というものです。

 全体の中のある1点だけに注意が向かい、その他の側面を無視する自動思考を“選択的抽出化”と言います。

 気分が落ち込んでいると、自分の悪い面だけに注意が向かってしまう悲観的な選択的抽出化となりがちです。

  「仕事でミスをしてしまった。辞めさせられるだろう。」

 極端な例ではありますが、それまでどんなに成果をあげていたとしても、注目しているのが目の前のミスだけになってしまって、最悪に事態に考えが向かってしまいます。

  「人から注意された。僕はダメな人間だ。」

 自分にとってのマイナスな体験が、あたかも自分の本質であるかのように自分にレッテルを貼ってしまいます。

 特別なメガネをかけて、世の中や自分のポジティブなことや明かることを見えなくしてしまうようなものですね。

 そのメガネをかけたままだと、意識に上がってくることはネガティブなことばかりになります。そしてこのようなフィルターがかかっていることに気づかないと、世の中全体が暗闇のように感じられるかもしれません。

 このような思考から抜け出すにはどうすればいいでしょうか。

 特別なメガネ(フィルター)をかけていないか検証することが必要です。

 その出来事に対する他の見方はないだろうか、と思いを巡らせてみるのです。
 
 もしかしたら、そのミスは、仕事のシステムの中に問題点を見つけ出すヒントになっているかもしれません。

 もしかしたら、注意した人はあなたに期待をして言ってくれたのかもしれません。

 同じ出来事の捉え方は多面的です。

 ここで注意してほしいことは、他の見方を探すというのは、選択的抽出によるネガティブな思考を否定するということではないことです。

 ネガティブな見方も、出来事の理解の仕方(思考)の一つです。

 それを否定せず、別の方向から光を当てると、どんな考え方があるかを探してみるイメージです。

 新たな見方を見つけることができると、気持ちが少し楽になるかもしれません。

 ネガティブと思われる出来事に出会ったら、一度考えてみてくださいね。

 
【 2018/06/01 】 未分類 | TB(0) | CM(0)